合理的な微笑み

 この前、付き合って3度目の記念日を迎えた。同じ人を3年間も自分に縛り付けてるの、おそろしいなあ

 わたしが恋人とお付き合いを始めたのは大学1年生の冬だった。お酒なんて全然飲めなくて、手をつなぐ瞬間が何よりも緊張した。今では恋人とウイスキーロックをあおり合ったり、呼吸をするように手をつないだりする。

 わたしは昔のわたしより恋人に微笑みかけられなくなってしまった。初対面の人やレジのバイト中によく「笑顔が素敵ですね」なんて言われるけど、わたしの笑顔の原理は赤ちゃんの天使の微笑みと同じで(わたしはそんな尊いものじゃないけど)、アタッチメントほしさに無意識で微笑んでる赤ちゃんみたいに、自己防衛の一環として無意識に微笑んでるだけ。だから仲良くなるとどんどん微笑みは減るし、家族とは目が合ってもニコリともしない。

 付き合いたての頃、なんでわたしと付き合ったのか聞いてみたら、恋人は「年下の女の子がニコニコしながら自分についてきてくれたら、嬉しいでしょ」って言ってた。もう今のわたしは恋人にニコニコできない。かなしい。そのくせ別れ際はさみしくて泣くし。

 

 たぶん外デートしかできないのも関係している気がする。デート用に着心地の悪い服を着て、足の痛くなる靴を履いて、皮膚呼吸を妨げる化粧をして、慣れない場所で慣れないコーヒーをすすったりするのが確実にわたしから微笑む気力を奪っている。同棲したら、そういうエネルギーを全部かきあつめて、微笑むことができるんじゃないかなあ。