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好きでも好きじゃなくても苦しい

 最近は倦怠期に入ったり脱したりしていた。

 ツイッターで誰かが「女の怒りはポイント制」と言っていたけど、わたしも例にもれずそのタイプだ。わざわざ口に出すほどでもないイラッがポイントとして貯まっていって、ポイントカードがいっぱいになったら爆発する。生理前はポイント2倍。

 

 12月の半ばに卒論を書き終わった。切羽詰ってるときは昼食の時間返上で実験してた。そんなときに恋人から「カツカレー食べてる。おいしい」みたいなLINEが来て、そのたびにポイントは貯まっていった。でも「わたしはお昼抜いてるんだからそんなLINE送ってくんな」とも言えず。

 最後のポイントが貯まったのは卒論を提出したすぐあとに、恋人と会ったとき。わたしは前から「卒論が終わったら某有名洋菓子屋さんのケーキを食べに行きたい」と伝えていたのに、恋人の車で連れてかれたのはジビエ料理屋さんだった。なぜ。

 しかもジビエ料理はカレー、刺身、鍋の3種類しかなくて、刺身は食べるの怖い(わたしは熱した牛肉でもおなかを壊す)、鍋はカレーの倍の値段、ということでカレーしか食べる選択肢がなかった。ホントは辛いの苦手だから外食でカレー食べたくないんだけど仕方がなかった。

 そんなこんなでわたしの怒りは爆発して、でも爆発の仕方はめちゃくちゃ怒るとか恋人を裏切って浮気するとかではなかった。わたしは恋人に興味を失って全然好きじゃなくなった。

 恋人から毎日送られてくるLINEが苦痛だった。「お疲れ様です」「そうですか」「いいですね」この3つの言葉しか使わなくなった。わたしのコミュニケーション能力はsiri以下だった。

 そんな恋人を放ってわたしは地元の女の子たちと飲んだ。そこで恋人との状況を話したら、ほろ酔いの友達が「話し合わなくちゃダメだよ!!」と言って、わたしが話した恋人への不満をすごい速さで打ち始めた。わたしのスマホで、恋人宛に。

 恋人からはすぐ返信が返ってきた。わたしが言った洋菓子屋さんのことは覚えていなかったらしい。わたしはプレゼントや高級ディナーじゃなくて、わたしの発言を覚えててくれたり好き嫌いを確認してくれたりすることに愛を感じるから悲しかった。でもその瞬間は悲しいと感じるほどの愛も無かった気がする。

 結局もう一度直接会って、話し合った。ナナズグリーンティーは女の子でいっぱいだった。わたしはカレーじゃなくてケーキが食べたかったこととか、日記みたいなLINEは返しづらいからやめてほしいこととか、カードに押したポイントのひとつひとつを解説した。ついでに「あなたはわたしのことが好きなんじゃなくて、彼女がいる自分が好きなんじゃないんですか」と言ったら、「そんなこと考えたことなかった」と言われた。「恋人のことが好きなのか、自分を好きになってくれる人のことを好きなのか」は人類共通のテーマだと思ってたけど、健全な精神を持っている人間はそんなこと考えないらしい。

 その日恋人はめちゃくちゃ謝りまくってポイントカードの制裁は終わった。爆発はする方もつらかった。

 数週間後、恋人と飲んだ。ビールと日本酒を飲んだ恋人は顔を赤くしながら「もしユリちゃんと結婚したら、ユリちゃんは前みたいに怒りを貯めて貯めて、熟年離婚されそう」と言った。否めない。でもそういう危機感を恋人が持っているうちは、大丈夫だと思う。