クラゲの水揚げ

「麺麭に関係した経験は、切実かも知れないが、要するに劣等だよ。麺麭を離れ水を離れた贅沢な経験をしなくっちゃ人間の甲斐はない」


明けましておめでとうございます。

年が明けたので、ブログ名を変えました。夏目漱石『それから』から。


私は大学の頃に『それから』を読んだ。中でもこの言葉は衝撃的で、学生時代に随分苛まれた。


私は趣味がない。高校までは毎日絵ばかり描いてたけど、大学に入ってからぱったり描かなくなってしまった。たぶんこれは現実逃避だった。この話はまた今度書きます。


大学時代はなんのために生きてるのか分からなかった。自由で、時間だけ持て余して、何をするべきなのか分からなくて、ただ苦しかった。自力で泳ぐことのできないくらげのような人間は、水流のない環境では水底に沈んでしまう。


今は社会人となり、周りの水流に流されて生活している。多少冷たくて流れの速い水流でも、まったく無いよりマシだ。学生の頃に生えてた白髪は、入社してからピタリと無くなった。私を水底に追いやる自由な時間は減って、水槽をキラキラ泳ぎ回るクラゲに私はなった。


依然として趣味は無いけど、仕事のおかげで「そんな時間は無い」と言える。脳が完全に思考停止している。このままじゃ、本当に脳みそまでぷにぷにのクラゲになってしまうかも。それでも、水底に沈んで圧死するよりは良い。